サンパチェンスの「打ち水」効果は、裸地に打ち水するよりも温度降下の効率がよく、その効果の持続性があります。理由は、植物は自分自身の体を守るため、限られた水分を効率よく利用して蒸散により自分の体温を下げる仕組みを持っているためです。また、葉の陰になっている空間の気温は、葉の表面温度よりもさらに低くなることから、そこで冷やされた空気が風や対流で拡散し、植物周辺の温度は気温よりさらに降下します。この現象が植物による「打ち水」効果です。
このことで、道路や露地などの裸地に直接「打ち水」を行うよりも、植物を植えた方が持続的で効率のよい気温降下が期待できます。植物は周辺の温度や湿度に微妙に反応しながら適切な蒸散を続けるので、人力や動力によるよりも経済的かつ効率的に「打ち水」効果が実現できるわけです。さらにサンパチェンスなら見た目にも美しい草花なので一石二鳥です。
野外でサーモカメラを用いて植物の「打ち水」効果についての実験を行いました。サンパチェンスの表面温度は他の花き園芸植物よりも3.0~4.5℃低い結果となり、気温よりも2.5℃低く、地面の温度よりも10℃以上低いことが分かりました。表面温度が低ければ、その分周辺の温度を効果的に下げることが期待できます。
共同研究:浦野豊博士(東京大学・農学)、独立行政法人農業環境技術研究所
気温34℃の日にサーモカメラを用いてサンパチェンスの葉の表面温度と「緑のカーテン」の測定を行いました。
「緑のカーテン」よりもサンパチェンスの方が打ち水効果があることが分かります。
今年の夏は「緑のカーテン」と組み合わせて、涼しい風を受けながら快適に過ごしてみませんか?
サンパチェンスには、水中に溶けた窒素やリンといった栄養塩類の高い浄化能力があることが実証されました。
今回の研究でサンパチェンスは、窒素やリンの除去速度において、水質浄化能力が高いことで知られているヨシと同等の数値を示すとともに、窒素やリンの体内含有率はヨシを上回る結果となりました。
窒素やリンをはじめとした栄養塩類は、植物体を形成し、自身を増殖するために必要な物質です。しかし、水中で窒素やリンが多くなりすぎ、水の富栄養化が進むとアオコなどの植物プランクトンが大発生したり、侵略的な外来水生雑草が異常繁茂したりします。その結果、水中の溶存酸素がなくなり魚介類などに深刻な影響を与えます。つまり、窒素やリンが多く含まれている富栄養化の進んだ水中から、植物がそれらを吸収・除去することは、自然の摂理に即した環境に優しい浄化方法といえます。
サンパチェンスは春から秋まで開花期が長く、株が大きくなるためバイオマス量が確保されます。そのため、栄養塩類の除去速度は早くなり、体内含有率は高くなります。またサンパチェンスは、気孔が大きくその数が多いため、蒸発散量が多い植物です。そのことが水中の栄養塩類を吸収する力となっています。
共同研究:沖陽子名誉教授(岡山大学大学院環境生命科学研究科)
岡山市 藤田地区水路 2010年
岡山県下三大河川の下流に開けた平野には農地として転用可能な大きな干潟がありました。四方八方に灌漑(かんがい)用水路が走り、まるでオランダを思わせます。その水路にサンパチェンスを水上花壇として植栽し、景観と水をきれいにしようという計画でした。